112. おひとりさま



「平均世帯数 2033年に 1.99人に」(国立社会保障・人口問題研究所)
 2040年には全世帯に占める一人暮らし(単独世帯)の割合が39.3%になり 全世帯の4割を占めると予想されている 現役世代の40~50代でも 4~5人に1人はシングル(その半数は親と同居とされる)今後も増え続けると見込まれる
「少子高齢化」「未婚化・非婚化」が拍車をかける


・上記出典:静岡新聞


「おひとりさま」とは 一言で言えば「独身の男女」 誰とも同居せず 1人で暮らしている状態のこと 独身のほか パートナーとの死別や離別など おひとりさまになる理由はさまざま
 かっては 女性が一人で自由に自分の生き方を決め 自立した人間として趣味や旅行を楽しむという意味があった

 単身者だけが「おひとりさま」とは限らない おひとりさま予備軍となるのは・・
・子供のいない夫婦
・事実婚の夫婦
・兄弟(姉妹)はいるけど関係性が希薄なケース
・平均寿命の差から おひとりさま となる女性の割合は多い


メリット 〇 自分のペースを守れる
 何事にも束縛されない自由を謳歌できる
 余計なストレスを抱えることが少ない
〇 煩わしい人付き合いがない
 ごく自然に煩わしい人間関係を回避できる
 気軽に単独で行動ができる
〇 お金を自由に使える
 自分のためだけの出費で済む
 自分のライフスタイル・ライフイベントを自由に描ける
〇 自由に恋愛ができる・多様な生き方を尊重される
 行動範囲を自身の判断で自由に決められる
デメリット ● 老後の心配が大きい
 いずれは自由で健康的な生活は続かなくなる
 介護の初期段階で対応してくれる家族がいない
● 病気のとき等 頼れる人がいない
 「誰かがいてくれたら」と思っても誰もいない
 苦しい体調でも全て自分でやらなければならない
● 精神的に不安定
 自由気ままな生活の中で ふと不安を感じてしまうと心のバランスが乱れる



Q: おひとりさま高齢者です そろそろ「終活」をと考えていますが 財産管理も含め 注意点はありますか?



一方 子(子がいれば)などが「元気なうちに親に準備してほしいこと」は ① 財産整理 ② 死後の手続きや財産処分 ③ 財産配分と承継 ④ 入院や介護の要望 ⑤ 家族へのメッセージ と 財産に関することが上位を占める 


 「終活」を考えるとき「まず 子(子がいれば)と話すことが大切」親が要介護になったり 亡くなったりしたとき介護の体制を整えたり 相続の手続きをしたりするのは主に子ども等 家族 例えば年末年始などに 親の終活について「家族会議」をしてみることは一案
・住む場所は 在宅と施設(どのような施設を希望するか)への入居のどちらを望むか
・費用のメドは 預貯金等で 介護費用は賄えるか 管理を任せる預金口座はどれにするか
・誰が介護するのか 介護やお金の管理を主に誰に頼みたいか
・葬儀(遺体の搬送も)・納骨・死後事務はどのようにしたいか また 誰に頼みたいか
・財産の分け方 誰に 何を どの程度相続させるか
等を親は事前に考え「家族会議」 に臨みたい 


エンディングノート
・エンディングノートは 終末期や死後に備えて自分の情報や思い 希望を書き残すノート
・残った家族が判断に迷うような場合 本人の希望が分かれば ガイドラインになる
・病気や死亡時などに様々な手続きがスムーズに進むようにとノートを用意する自治体も多い
1.自分のこと
・基本情報 生年月日や本籍地など
・これまでの歩み 学歴や職歴 住まい
・親族や交友関係 家系図 連絡先など
2.もしもの時の対応
・医療 延命措置や告知などの希望
・介護 誰に頼むか どこで受けたいか
・判断能力低下 財産管理など誰に頼むか
3.エンディング
・葬儀 形式や場所 喪主を誰に頼むか
・墓 すでにあればその場所 なければどんな墓を望むか
4.財産等
・預貯金 有価証券 保険 金融機関名など
・不動産 所在地や名義
・借入金やローン 借入先など
・公的年金 基礎年金番号や種類など
・デジタル遺産 デジタル機器で管理する資産やサービス
・サブスク 利用先など



■ 「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」(さらに「死後事務委任契約」)はセットで結ぶことが望ましい(移行型)(3点ともすべて公正証書にすることも選択肢)(+「遺言」が最強)
・はじめは「財産管理等委任契約」で対応し 判断能力を失ったら「任意後見契約」に移行する
「任意後見制度」については こちらをご覧ください → Q&A「社会保障」

  財産管理等委任契約 任意後見契約
利用開始時点での本人の判断能力 必要 必要
利用方法 財産管理受任者と本人とで契約締結 任意後見候補者と本人とで契約締結(公正証書)
開始時期 契約で定めた通り 本人の判断能力が低下し任意後見監督人が選任されたとき
監督機関 なし 任意後見監督人
取り消し権 なし なし



■ 死後事務委任契約 居住する自治体への死亡届の提出や火葬・埋葬の手続き 遺品整理 病院や施設の退所手続き 公的年金や社会保険の停止など 亡くなった後に必要な事務手続きは多い 特に「おひとりさま」は 生前に「死後事務」を依頼するサービスを利用する方法もある
 死後事務委任契約のサービスは 弁護士や司法書士 NPO 信託銀行などが提供している 費用は 委任する事務手続きの内容や家財・遺品整理を含むかなどで異なる 生前に依頼した費用の実費と報酬を預けておくケースが一般的 死亡保険金で精算するケースもある


「おひとりさま」の終活支援(以下の3つが中心)

日常生活支援 緊急時の対応、買物、受診 入退院 入退去時の付き添い、入院中の支援(物品届 手術立ち合いなど)、転居の手続き、家具処分の立ち合いなど
身元保証 入院・入所手続き、緊急連絡先など
死後事務 遺体の引取り、火葬、借家の原状回復など
■ ある調査によると 死後対応が難しい場面として 次の5つがあるとされる
① 相続財産清算人の選任の申し立て
② 残置物の処分
③ 納骨
④ 葬儀
⑤ 医療・介護費の精算と退所手続き
■ 民間の身元保証サービスは 様々あるが 低所得者では利用が難しく 死後の契約履行について確認できないなどの課題もある 「公的機関が関与して信頼性を高める 妥当な価格でサービスを提供する 判断能力の有無にかかわらずニーズに応える」という公的な支援機関の構築が求められる
■ 単身高齢者世帯の貧困率は高く 生活保護世帯に占める割合も大きい(全体の過半数を占める うち9割は単身者 その割合は 年々上がっている)


・おひとりさま 身元保証に困ったら
 身元保証人が必要になるケース
・緊急連絡先として ・介護 / 福祉施設への入院 / 入所手続き ・入院計画書やケアプランの確認 ・治療方針や手術の同意 延命治療の諾否 ・退院 / 退所手続き ・死亡時の遺体 / 遺品引き取り
・民間の身元保証サービスを選ぶ際は 費用とサービス内容をよく確認したい
サービス提供団体(例) 主な内容 主な料金
総合身元保証サポート
(シニア総合サポートセンター)
・病院 介護施設 賃貸住宅などの身元保証
・葬儀 / 納骨 死後事務手続きの代行
初期費用で最低140万円
OAGライフサポート ・生前の安否確認 身元保証
・任意後見契約 死後の事務手続き
契約金や預かり金など 初期費用で約180万円
あんしんの3点セット
(品川区社会福祉協議会)
・任意後見契約
・公正証書遺言の作成
・福祉サービス利用や入院手続きの手伝い
・契約時に3万円
・基本料金 月2000円
・任意後見などは別途実費


■ 「おひとりさま」の場合 治療をしても回復が難しい状態になったときに備え 何らかの形で「延命治療拒否」の意思表示をしておくことは非常に大切(以下の3つの方法がある)
■ 以下のような内容を記載する
① 不治かつ死期が迫った状態の場合 延命治療を拒否すること
② 家族も尊厳死に同意している事
③ 容認した家族や医師に刑事上 民事上の責任を求めないこと
④ 苦痛の緩和に関する処置は行ってほしいこと
⑤ 精神健全時に本人が撤回しない限り その効力は有効なこと
■ 留意点
 本人の意思が変化する可能性を考慮し 作成後も関係者が繰り返し話し合いを行い 本人の意思決定を支援すること

尊厳死宣言公正証書
・公証役場で作成 尊厳死の希望を尊重してもらいやすい 延命措置拒絶の意思表明 尊厳死を望む理由 医療関係者らに対する免責 尊厳死宣言の有効性を示すことができ
・費用:基本手数料11.000円 謄本代含め合計12.000~13.000円程度
リビングウィル
・厚生労働省のガイドライン(2018年改定)等に基づき医療現場で尊重される「人生の最終段階における事前指示書」 医療についての細かい意思表示をすることができる
・日本尊厳死協会や日本臨床内科医会のウエブサイトにフォーマットがある
・費用:日本尊厳死協会での保管の場合 年会費2.000円または終身会員費7万円(税込み)
エンデイングノート
・終末期医療の方針 延命治療の可否に関する希望 意思表明の書類等の有無・保管場所などを記載しておく 法的効力はないが 手軽にとりかかることができる 自分の考えをまとめる「下書き」としても活用できる
・費用:無料~各ノートの購入費用


*「遺言の存在を明らかに」
・「遺言」は、被相続人の最終意思を実現するもので,これにより相続をめぐる紛争を事前に防止することができる
・「おひとりさま」で遺言がない場合は 故人の兄弟姉妹などが法定相続分に従って分けるのが一般的 法定相続人以外の第三者に遺産を残す「遺贈」や特定の団体などに寄付をしたい場合は 遺言書に明記する必要がある
 「死後事務委任契約」を遺言執行者と交わしておけば遺言の内容を実行してもらえる
*遺言作成のポイント
① 遺産の分け方を明確に書く → 誰に、何を、いくらを明確に
② 相続人が納得できる分け方に → 特別受益 寄与分 遺留分に注意
③「付言」を活用する → 遺産の分け方の理由 家族への思いを伝える
 ちゃんと伝わるように書きましょう そうでないと → 「遺産争族・争続」になりかねない(魑魅魍魎が跋扈することになりかねない)

→ ブログ「100. 遺言書」もご覧ください
→ ブログ「095. 離婚とお金」もご覧ください


2024年05月20日


2023年02月16日