094. 離婚とお金



「夫婦は、その協議で、離婚することができる」(民法第763条)とあるように 夫婦が合意し 子どもの親権者も決まれば 離婚は自由にできる(改正前親権者の記載がない離婚届は受理されない)(協議離婚の成立に 理由は必要ない)

・しかし 夫婦の一方が離婚に合意しない場合は 家庭裁判所の調停 調停が不調に終わった場合は裁判がある


・この度 離婚後も父母の双方が子どもの親権を持つ「共同親権」を創設
 離婚すること自体は合意できたものの 親権者について合意できない父母が 離婚を先行しても受理される という改正も(77年ぶりの改正)さらに 祖父母の面会交流も可能となる改正も(2026年施行)






 離婚に伴うお金の問題は大きく5つある 婚姻費用・慰謝料・財産分与・年金分割・養育費の5つ

・離婚とお金 ① 婚姻費用

 法律上「婚姻費用」については 夫婦がその負担能力(収入の大小等)に応じて 分担する義務を負う
 離婚に向けた別居中でも 法律上は夫婦であることに変わりはない
 夫婦が別居した際に 妻に比べて収入の高い夫が生活費を払ってくれないような場合は「婚姻費用分担請求」をすることができる



「婚姻費用」は 支払う側の年収と受け取る側の年収をもとにした「算定表」を目安に決まる


・離婚とお金 ② 慰謝料

「慰謝料」離婚によって生じた精神的な苦痛を慰める目的で支払われる賠償金  離婚に至る主な原因を作り出した「有責配偶者」から 苦痛を被ったもう一方の配偶者(無責配偶者)に対して支払われる   調停や裁判をしても その額は 200万円~300万円以上になることはほぼない


・(2019年2月19日)最高裁「離婚時の精神的苦痛に対する慰謝料は(特段の理由がない限り)別れた配偶者の不倫相手には請求できない」との判決「平成31年2月19日判決」


・離婚とお金 ③ 財産分与



・退職金(未受給の退職金も分与財産になる場合もあるが)共同で築いた財産であることが必要なため 婚姻前の就業期間や別居期間に対応する部分は対象にならない また 離婚から退職まで10年以上ある場合の退職金は一般的に分与対象とならないといわれている
・財産分与も年金分割制度も離婚から2年で権利は消滅する
 令和6年5月に成立した改正民法(施行日未定)で 離婚した際の財産分与の請求期限が2年から5年に延長されたが それに伴い 厚生労働省は 夫婦が離婚し厚生年金を分割する際の請求期限を現行の離婚後2年以内から5年以内に延長する方針を固めた(2026年までに施行される)


離婚による家の名義変更(財産分与)
・共有名義の変更や解消方法 住宅ローンが残っていなければ比較的容易
 離婚届の提出と夫婦間の協議が合意に達していることが求められる(財産分与にあたっては、金額や支払い方法などをきちんと離婚協議書に記載する必要がある どちらか一方が同意していないケースでは裁判所で解決することになる)

 夫婦の共有名義となっている場合 夫婦の財産分与は、財産形成などの寄与度によって決定されることが多く、特別な事情がない場合には不動産の持分の割合ではなく1/2 づつとするケースが多い
 お互いの話し合いで持分を相手方に変更することで合意ができれば、あとは持分の名義を変更するだけ
 ただし離婚届の提出から(法的に離婚が成立した時点から)2年以上が経過していると時効となり、財産分与請求権が消滅するため注意が必要
 夫婦の合意があれば、必要書類に署名押印し、法務局へ申請をすれば名義変更をすることができる  離婚後も家を住み続ける人の名義に変更するには「所有権移転登記」を 共同名義だった家をどちらか片方の単独名義に変更するためには「持分移転登記」を行う

〇「3種類の財産分与」→ 財産分与は税務上の贈与に該当しないので「贈与税」「不動産取得税」は原則かからない
・清算的財産分与:離婚によって夫婦が共有する財産を分け合って清算するもの 共働きの場合は折半、専業主婦の場合は3~5割程度が一般的
・扶養的財産分与:夫婦のどちらかが生活に不安がある場合、収入の多い方から少ない方へ財産分与の名目で行なわれる生活の援助をするもの
・慰謝料的財産分与:精神的損害に対する賠償という性質を持つ財産分与
 しかし、財産分与の額が著しく過大で、相続税や贈与税を免れるために行われたとみなされる場合には課税されるケースもあるため注意が必要

〇「譲渡所得税」 → 原則かかる「財産分与のときの不動産の時価」が「不動産取得時の時価(建物については減価償却後の価額)」よりも値上がりしていれば、その差額(=譲渡益)に対して、財産分与をした方に譲渡所得税がかかる しかし、「居住用不動産の3000万円の特別控除」の特例もあり、実際にはかからない場合が多い

〇「登録免許税」 → 財産分与で名義を変更する場合には必ずかかる

・共有名義の変更や解消方法 住宅ローンが残っている場合
① 不動産は夫名義 離婚後も夫が住み続ける場合(住宅ローンも夫名義)特に問題はないが
 妻が住宅ローンの連帯保証人になっている場合 → 連帯保証人を外す必要
「連帯保証債務」は離婚したからといって、なくなるわけではない 金融機関にはずしてもらえない場合は、代わりの連帯保証人を探したり、別の金融機関に借換えをする必要がある

② 不動産は夫名義 離婚後は妻が住み続ける場合 (住宅ローンは夫名義)→ 名義を妻名義に変更
 「金融機関に離婚による名義変更のため 住宅ローンの債務者も妻に変更してほしい」と相談
→ 妻の資力(返済能力)について審査 審査が通らず変更できない場合は、別の金融機関への借換えか 連帯保証人を付けたりする必要がある また、金融機関の承諾なく名義変更をすると残債務を一括請求ということもあるのでやめたほうがいい

 なお 名義を変更しない場合は(名義人(夫)が返済を続ける場合) 支払いが滞ると最終的には競売となり退去のリスク(公正証書で作成した離婚協議書でローンの支払い責任について明記することが必要)しかし そもそも銀行がローンの名義人が住んでいないのに住宅ローンとして継続してくれるかという問題もあり その場合は 事前に金融機関や弁護士に相談することが大事

③ 不動産は夫婦共有名義 住宅ローンの債務者も夫婦二人 どちらかが住み続ける場合
・連帯債務の場合 → 連帯債務を外す必要
・ペアローンの場合 → その分を返済する または、その分について債務者を変更する必要


・離婚に伴い、マイホームを処分する場合
① 売れたお金で住宅ローンをすべて返済できる → 残金を協議して分ける
② 売れたお金で住宅ローンをすべて返済できない → 売れない どちらかが住み続けローンを返済
 → それでも処分したい 「任意売却」(または 家族売買・親族売買)の手続きへ


家を売却しない場合 ローンを返済続けることに
名義人(夫)が住み続ける 連帯保証人が妻の場合 名義人でない元妻も延滞時に催促される
名義人でない人(妻)が住み続ける 名義人(夫)が返済を続ける場合 支払いが滞ると最終的には競売となり退去のリスク(公正証書で作成した離婚協議書でローンの支払い責任について明記する)



・離婚とお金 ④ 年金分割





・現在 年金事務所に請求する期限は離婚した日の翌日から2年以内だが5年以内への延長が決まっている(26年4月予定)
・相手が死亡してから1ヶ月が経過すると、年金分割の手続きはできなくなる ただし,3号分割や案分割合が定められて確定した後に相手が死亡した場合には,死亡後1か月間に限り請求手続が可能
・分割するのは 年金額そのものではなく厚生年金保険料の納付記録(標準報酬)のみ
 分割を受けた人の平均年金月額の増加額は 合意分割(離婚分割)で3万円台 3号分割のみだと7.000円台 分割額は「思ったより少ない」







・専業主婦が離婚した場合と離婚しない場合 年金はこう変わる
妻:例えば現在50歳で 結婚するまで国民年金に加入しており 結婚後は専業主婦だった場合
離婚しない 65歳~

65歳以降に夫が亡くなると
老齢基礎年金(+振替加算)

老齢基礎年金(+振替加算)と遺族厚生年金
離婚した 65歳~、 または 65歳以降に元夫が亡くなると 老齢基礎年金+(分割された)老齢厚生年金(思ったほど多くない!)
子供 養育費をもらうなど父親によって生計を維持していた場合に 父親の死後 18歳になるまで遺族厚生年金がもらえる 遺族基礎年金は母親と同居していると支払い停止になる
「年金を分割される側(夫)」
・離婚時には 退職金や貯蓄等資産は 財産分与され(場合によっては 慰謝料も発生)さらに 終身である年金は分割される(合意分割の際 平均して年に40万円近く年金が減少する)老後の生活資金は大幅に減少し 影響は余りにも多い
 また 経済的問題だけではなく 離婚に至る経緯によっては 子供との関係が希薄となり 介護等老後の支援が期待できなくなるというケースも多い


・離婚とお金 ⑤ 養育費


 残念ながら「離婚」となった場合、民法は離婚時に「養育費について協議する」と明記 だが「相手と関わりたくない」「支払い能力がない」などの理由で、養育費の取り決めをしないケースは多い(約束事の文書を交わすも「公正証書」にする場合はまれ)「肝心なのは 離婚の際にまず養育費を取り決めること」
 協議がまとまらなければ ① 裁判所での調停 ② 弁護士に交渉を依頼 ③ 裁判外紛争解決手続き(ADR)の利用 ④ 法律相談に応じる日本司法支援センター(法テラス)を利用する といった対応が考えられる
 母子家庭の多くは父親から養育費をちゃんと受け取っておらず、貧困を招く一因に「逃げ得」を決め込む父親も多い





・「養育費の未払い」で困った場合 相手の財産(預貯金や不動産、給与等)を差し押さえ「強制執行」の申し立てをするのですが、そのためには「債務名義」(裁判所の判決(仮執行宣言付き判決))・裁判所の調停調書や和解調書等)が必要
 ただし、「養育費未払いの場合は直ちに強制執行ができる」という趣旨の文言が入っている「強制執行認諾文言付き公正証書(執行証書)」(債務名義にあたる)があれば裁判を経ることなく「強制執行の申し立て」ができる

① 16年ぶりに最高裁「改定養育費・婚姻費用算定表(令和元年版)」を公表(改正)(令和元年12月23日)

②相手を裁判所に呼び出して裁判官の前で「財産」を明らかにさせる「財産開示手続き」
 以前は、相手が呼び出しに応じなかったり、うそをついたりしても罰則が軽かったが、2020年4月からは「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」に

③「第三者からの情報取得手続き」という仕組み 裁判所の情報開示の命令により預貯金や株式などについては金融機関、勤務先は市町村など 相手が不動産を持っている場合は法務局が情報提供しなければならなくなった 財産を隠すことはほぼ不可能に

④「養育費の立替制度」を国が検討 保証料を補助するなどして民間保証会社と連携する地方自治体も
⑤ 「法定養育費制度」(2026年までに創設 省令を制定 )
法定養育費 内容
不払い 差し押さえ 養育費の取り決め文書に基づき「先取特権」を付与 ほかの債権より優先的に
養育費の決定 収入や資産の情報開示 家庭裁判所が開示の命令も
1回の申し立てで複数の手続きができる
取り決めなく離婚 「法定養育費制度」一定額の養育費請求ができる
法定養育費 離婚した日にさかのぼって請求できる
「生活保護の水準を念頭ににした額になる可能性が大きい」
〇 民法改定により 成年年齢が18歳に引き下げられたが 養育費については今後も20歳までの支払いが目安に(実際には 子供が大学まで進学するケースでは 22歳まで養育費を支払う取り決めが行われることもある)

〇 支払う側が再婚し 子供が生まれた場合は「養育費減額の調停」を申し立てられる可能性も(一度決めた養育費も その後の状況に応じて変わることがある)


● 離婚後に再婚したり 入籍せずに新しいパートナーと暮らしたりする人も多いですが
 こちらもご覧ください→ ブログ「095. 結婚とお金」

 特に「熟年離婚」をお考えの皆様へ
① とにかく早く別れたいという思いから十分な話し合いをせずに離婚するのは止めましょう 請求できるものは請求する(財産分与も年金分割制度も離婚から2年で権利が消滅してしまう →離婚後2年以内から5年以内に延長する 方針 を固めた(2年後の2026年までに施行される))
② 高齢期のリスクを考えましょう 子供がいるならば 認知症に備えた家族信託等や介護施設の利用等について 伝えましょう
③ 離婚後に入籍せずに新しいパートナーと暮らす場合 事実婚であっても遺族年金の受給はできるが 法定相続人ではないので 遺贈を考えるならば遺言等の対策が必要なので 対処しましょう

 → こんなサイトもあります「公益社団法人 家庭問題情報センター」

□ どうなる? 離婚後の「共同親権」(2026年施行)


・上記出典:東京新聞



「共同親権」メリット
〇 離婚後も育児を平等に分担できる(一方の育児負担が減る)
〇 子どもとしては 両方の親と関われる 片親と突然引き離されることがない
〇 親として子どもを養育する義務・権利を引き続き負うことができる
〇 シングルマザーの貧困化の解消につながりやすい
〇 「親権を失う = 子どもを奪われる」という印象からの 親権争いの激化が防げる
〇 一緒に住まずとも面会の権利の実効性が高まる
〇 子にかかわることで養育費の支払いの実効性が高まる
〇 母親が働いていない場合でも 連れ去った場合でも 母親が親権を持つ可能性が高い日本で 父親の親権獲得が実現しやすい
〇 再婚した場合 その子が虐待等を受けないかを監視するという役割が期待される
〇 「父親が働き母親が家事・育児をする」という考えがいまだ根強い日本でのジェンダー解消につながる
「共同親権」でデメリット
● 子どもにとって「どこに自分の居場所があるのか」がわからなくなり精神的に不安定になる
● 「親の都合による面会」を強いられ 子どもに物理的な負担もかかる
● 両親それぞれに子どもに合う権利が尊重されるが 会いに行く側の負担が大きくなる
● DV・虐待・モラハラ被害者が 離婚後もDV加害者から逃れにくくなる
● DVや虐待があると裁判所が認めた場合 単独親権にしなければならないとされても 裁判所がその実態を正確に把握できるのか?
● 離婚に応じる条件として「共同親権」を選ばされる懸念がある
● 教育方針の違いで 意思決定が遅れ子どもの利益を害する
● 離婚後も延々と子どもが 父母の紛争にさらされる
● 再婚後に養子縁組をしようとする場合 別居親の「許可・同意」が必要となる
●すでに離婚(単独親権)している場合も「共同親権」の対象になる 混乱するケースも


・番外編「遺族年金」「思ったほど遺族年金は多くない 当てが外れた」と感じる ” 残された妻 ”  押さえておきたい 「遺族年金のポイント 」①~⑱
・「遺族年金」について  「Q&A 年金」のページ

(「遺族年金」は 2028年4月以降 改正される)




(Money 、money、money ♪♪)


(「現在の日本では3組に1組の夫婦が離婚している」というフレーズをたびたび聞きますが「3組に1組」という離婚率の根拠となっているのは、1年間に結婚した夫婦数と同1年間に離婚した夫婦数を単純に対比したもの つまり「結婚した3組の夫婦のうち1組が離婚する」という意味ではない


・各種統計からみる最近の離婚の傾向
① 同居期間別の離婚件数の割合から → 5年未満が最も多く、半数以上が10年未満 結婚(同居)後、短期間で離婚するケースが多い

② 年齢別の離婚件数の割合から → 30代~40代の若い世代の離婚割合が多い 妻の年齢では、34歳までに離婚する割合(30代前半の離婚割合)が半数近くを占める 10~20代の離婚割合は下がっているが、これは晩婚化による減少で若年層の離婚の確率が低下したわけではない

③ 若年層の離婚割合が多いことからも → 離婚総件数の未成年の子がある離婚の割合は58%(2016年調査)実際「子が成人するまでは離婚を見送る」という夫婦は多い

④ 「厚生労働省の人口動態統計特殊報告「婚姻に関する統計」の概況」によると → 平成27年(2015年)に結婚した夫婦のうち、26.8%が再婚

⑤ 全年齢の人に対する生涯で離婚する確率というデータは公表されていないが → 実際の日本の「普通離婚率」は1.7% 先進国であるアメリカの2.5%、韓国・スペイン・イランの2.1%、ドイツ・オーストラリア・オランダの2%などと比べてもそれほど高くない

⑥ 再婚率は上昇しており 結婚するカップルの1/4は どちらか 又は双方が再婚の組み合わせ


2025年10月28日

2022年10月20日