059. 山は高い

 自然豊かな「山国」「島国」日本 当時 山といえば 毎年のように初日の出を見に登った太郎山(1164m)か 学習院中等科の1年下の登山旅行に山頂で出くわした烏帽子岳(2066m)か 忘れもしない1973年2月6日の浅間山(2568m)の大噴火(下図)(校舎のベランダから良く見えた 授業どころではない)か リフトで行くスキー場の山頂ぐらいしか接点がなかったが・・・


 また、幼少のころの年末年始 NHK夜7時のニュースで あの勇ましいテーマ音楽の後「長野県警によると 北アルプス〇〇岳で 雪崩に巻き込まれとか 滑落したとか 悪天候の中 ~~が遭難した模様 救難ヘリコプターによる捜索が~とか 夜を徹しての救難隊による捜索活動が続いている~とか」の報道がよくあった そのレポートがまさに真に迫っており 何か寒々とした臨場感・緊迫感・緊張感があった 「寒いだろうなあ」「なんでこんな時に登っているんだ」とかいろいろ思っていた

 バックパックでいろいろ旅はしていた当時 よく山旅に行くという友人に 槍ヶ岳(3180m)に誘われる 経験がほぼないが 5泊6日らしい 二つ返事で行くことに

 歩けば日本も広く 上高地~槍ヶ岳~富山湾 確か 5泊6日か 6泊7日 よく覚えているが 初日は大雨 いよいよ登山道に入るぞというときに 濁流の川を丸太2本の橋を渡る 生まれて初めての恐怖感を味わう 滑って落ちたらお陀仏 まだ始まってもいないのにいきなりこれか!とも思ったが 意外にスンナリ 後は ひたすら歩く 2日目からは ずっと天気には恵まれる



 山小屋・山歩き・焚火・寝袋・昼寝・清水・満天の星・日の出・雲海・お花畑・雷鳥にも会った 素晴らしい日々!これ以降 山歩きに はまることに まあ ハイキングみたいなものですが 夏の尾瀬 秋の丹沢 夏の高尾山 秋の白根山・・冬は行かない 冬山は怖くて寒い 春も行かない まだ寒い

 この山旅で ヘリコプターに 2度遭遇している 槍を目の前にして登っていた時 山小屋に物資を運ぶのか 何かを運び出すのかで ヘリコプターがホバリングしている なんと そのヘリコプターが吊っていたドラム缶を落としたのである そのドラム缶はものすごい音を立て ものすごいスピードで僕らの脇を転げ落ちていったのである「まったくとんでもねえ」その夜はその山小屋に泊ったのだが(その周辺にテント泊だったかも)山小屋の人は それについて話題にも出さない

 もう一回は 鎖だったか 梯子だったかを登り 槍の頂上に立った時 そこには5~6人ほどがいたが 報道ヘリコプターが僕らの頭の上に飛んできてカメラを回したのだ 操縦士の顔も見える 僕らは狂喜乱舞「ヤッター ヤッホー」「俺も乗せてくれえ」「助けてくれえ~」「ここに降りてこーい」「どっかに連れてって~」「うるせいぞ~」「ここから降ろしてくれえ」「写真送ってくれえ」とか 最高潮 あの時の写真欲しかったなあ

 この登山で学んだことがある 疲労困憊していた時 友人の声「半歩でも前に歩けば 少しでも前に進める 前進する 目的地に近ずく」これを実践できたこと それが真実だと実感できたことだ 半歩でも 歩みを進めることだ その後の人生に大きく影響する こうして「2度の死の恐怖」(!?)を乗り越えることができた(!?) 



 この山旅の数年後に行った ヨルダンの死海が -430m 槍ヶ岳が 3180m(日本で5番目の高さ)それでもまだまだ 高低差3610m 世の中には 高い山はたくさんあります 日本一の山 富士山には一回は登りたいなとも思っている

 ちょっと意味合いは違いますが 「分け入っても分け入っても青い山」(種田山頭火)「幾山河超えさり行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく」(若山牧水)

・上図出典:ウォールデン軽井沢


 息子と浅間山の火口を見に行ったことがある 噴煙は止んでいたが レベル幾つかの登山危険情報が出ておった 火口の周りを半周ほどして 休んでいると 1人のハイカーに声をかけられる 火口の東西南北の何処に行ったのかと どうやら場所によって有毒ガスが観測されているらしく 肝を冷やした 新聞沙汰になるところだった
 そんな彼は 大学でワンゲルの部長をした 0泊2日の富士登山も何度かしたらしい いつもあまり混雑のない9月の後半らしい 2014年9月27日の御嶽山噴火の際「大丈夫 行ってないから」とのメールが届く




 たった一度の人生ですが いろいろなことがあるんだろう「人生 山あり谷あり」噴煙が上がったり・山崩れがあったり・源流を見つけたり・山寺で修行したり・お花畑で昼寝したり・秘湯に入ったり・スズメバチに襲われたり・清水で喉が潤ったり・滑落したり・道に迷ったり・熊に遭遇したり・人によっては妖精に逢ったり・間違って毒キノコを食って幻想を見たり・・・山は高く 人生は楽しい

・(1984年2月13日)植村直巳 北米マッキンリーの冬季単独初登頂に成功 下山途中に行方不明に 最後に消息が確認されたのが2月13日(命日とされる)

・「山は高い・・」こんな 本もあります


(「少年よ大志を抱け Boys, be ambitious」と北の寒空の下 クラーク博士も言ってるぞ(以下 全文:少年よ、大志を抱け!お金のためではなく 私欲のためでもなく 名声という空虚な志のためでもなく 人はいかにあるべきか、その道を全うするために、大志を抱け)
「白鳥は哀しからずや空の青 海のあをにも染まずただよふ」(若山牧水))

2022年02月10日